まりそのShow Must Go On

演劇/コンサートの記録用ブログです。

A Thousand Cranes @The Second Story Repertory

 

今日はこちらで知り合ったTomokoさんが出演されている舞台「A Thousand Cranes」をRedmondにあるThe Second Story Repertoryという小劇場に観に行ってきました。

 

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シアトル郊外、RedmondにあるThe Second Story Repertory、非常に素敵な劇場でした。

 

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70~90くらいの客席数(多分)でしっかりした舞台の小劇場(広めのロビーもあり※下の写真)に巡り会うと「あぁ~ここで芝居できたらなぁ」とついつい思ってしまいます。基本的な舞台があって、そこにセットを組み立てたり、照明を置いたり…応用がしっかりできる劇場はいいですよね。(天井までの高さがあるっていうのがポイントだったり…)

 

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この劇場、Redmond Town Centerという比較的大型のショッピングモールの中にあり、シアトル界隈での芸術の発展ぶりが伺えます。日本でショッピングモールの中に劇場がある所はないんじゃないかな…。

 

さて、「A Thousand Cranes」について。

日本の皆さんなら一度は聞いたり見たりしたことがあるであろう、「原爆の子の像」のモデルである佐々木貞子さんのお話しです。

 

2歳で被爆し、12歳で亡くなるまでのお話しを基とした舞台で、貞子さんが亡くなる直前まで折り続けた千羽鶴が物語のテーマになっています。

 

出演者は3人、主役以外の2人が色々な役を兼ねながら物語が進んでいきます。

 

印象的だったのは舞台中に挟まる折り鶴を数える声。

舞台が進むにつれて1000に近づいていくのですが、あえて無機質な数え方をすることで、それが時に貞子さんの希望だったり、死に向かう絶望や不安を暗示するものとしてとても効果的に使われていたように感じました。

 

鶴を折るシーンで鶴の折り方がスクリーンに映されたのが素敵でした。

 

最後のシーンで千羽目の金色の鶴をケンジが折り終えてそれを貞子が受け取り、後ろのスクリーンに映し出された「原爆の子の像」と同じ形になるという演出が私はとても好きでした。

 

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舞台セットもごくごくシンプルに白と赤で、センターに赤い丸いラグが置いてあることで視覚的に日本であると認識でき、また私個人としてはその赤い丸が爆心地を表しているようにも感じ取れました。

 

アメリカで日本の舞台をやるということで「日本らしさ」を出す必要性もあるんだろうなぁと最近思うことが多く、

例えば、この舞台だったらスクリーン一面に桜や五重塔的な物が写されることで、私からすれば、おお、広島っていうより京都だな…と思ってしまうのですが、アメリカ人からしたら「これぞ日本だ」という認識になるのだろうし、

場面転換で原爆というテーマを語るには明るい太鼓の音楽が流れると、私が日本でこの舞台をやるならこの音楽は使わないけれど、アメリカの人からすればこれが「日本らしい」と感じられて、物語をより深く理解できる手助けになるのかな…と思ったりします。

 

原爆を取り扱った作品をアメリカで上演する、というのはすごく難しいことだろうなと思っていて、平和を訴えたいのにどうしてもアメリカが悪者、というのが出てしまう、それをどう見せるか、どう理解してもらうか悩むところだな…と。

 

その点を「A Thousand Cranes」は良いバランスで作品として仕上げており、アメリカの方々にも受け入れてもらえるような作品になっていた所に、私は非常に感銘を受けました。

 

ちなみに、「なんでこの話をシアトルで?」と思われる方もいるかもしれませんが

実は、Seattle Peace Park(平和活動家のフロイド・シュモーさんによって作られた)に貞子さんと折り鶴の像があるんです。

残念なことに、この像は2003年と2012年に破壊行為を受けており、日米間の戦争による溝を少し感じます。

 

戦争の無い、平和な世界になりますように。